怒り(吉田修一)
ふと何か小説を久しぶりに読みたくなって息子と行ったブックオフ
夫婦殺害に始まり最後に殺人犯が判明はするものの、 これはミステリーではない。人を信じること、 裏切ることと裏切られること、心の弱さと葛藤、 自分に負けることとそこから前へ進むこと、 そういったことがテーマになっている。 もちろんミステリーなので誰が犯人なのかというのはなかなか分か らない仕掛けになっているけれど、それはおまけでしかない。そもそも最初の事件の動機も最後まで分からない。
信じること、裏切りといった人間の心ともう一つ、現代日本の様々な闇が当たり前のよう に描かれている点も注目したい。それらは決して特別なことではなく、日常の一部であり、だかrこそ日本が抱えている闇 の深さを感じる。沖縄での米兵によるレイプ問題、貧困と風俗、同性愛者の問題。元々は市橋事件にインスペレーションを受けてのことだったそうだが、そこから様々な怒りが呼び起こされ、群像劇という形になったのだろう。