HarrisonOak’s diary

76年生まれ、妻と息子、娘と犬の五人暮らし。IT系(SAP)の仕事をしている。趣味はギター、マンドリン合奏。

疫病と世界史(上)

原題はPlagues and Peoplesで1976年の作品。日本では2007年で2020年3月に7刷発行となっている。上は紀元前から紀元1200年まで。どういう本か知っていたのではなく、何となく本屋で手にとった。世界史、とあるけれど狩猟時代から扱っていて、以前流行った「ホモ・サピエンス」を疫病の視点で書いたようなところがあり、全く予想外に面白い。

 

まずなるほどと思ったのは、通常の歴史で扱われるような事柄を「マクロの視点」とし、疫病をミクロの視点としていること。例えばなぜコルテスはたった六百人程度の部下で、いかにして数百万のアステカ帝国を征服出来たのか?ここにヨーロッパ人が持ち込んで天然痘が大きな役割を果たしている、というところから序論が始まる。これはほんの一例で、歴史の教科書で習う四大文明について疫病がどういう役割を演じたのか、大胆な予想も交えて書かれている。「悪疫はしばしば軍隊と共に、あるいは軍隊のあとについて行進したのだ」というのはなかなかの名言ではないか。著者の、疫病の歴史を歴史学的説明のばに引き入れようとするというのは見事に成功している。

 

もちろん、この本を手にとったのは世界のCOVID-19の流行の影響で、ここにヒントがあるかもと思ってのこと。現在なぜ日本がこんなにも感染者、死亡者を抑えられているのか、というのが大きな話題となっていて、これはぜひ多角的な分析をして欲しいが、この本を読んでいて思ったのはやはりこの疫病がアジア発祥ということだからではないか、と思ってしまう。上巻で取り上げられている疫病の大流行は遠方から持ち運ばれ、抵抗力がないところに流行しているケースが多い。もちろん日本人の大変な努力と様々な良い習慣を否定するものでは全くありません。