HarrisonOak’s diary

76年生まれ、妻と息子、娘と犬の五人暮らし。IT系(SAP)の仕事をしている。趣味はギター、マンドリン合奏。

東大思考(西岡壱誠)

ふと、息子の勉強に役立つかも?と思いついて購入した。現役東大生で、元々偏差値が低かった著者による勉強法の解説。Daigoなんかの本もそうだけど頭が良い人が書いた本で、目次からも中身がすごく整理されて作られているのがわかるし、ポイントには最初からハイライトもあってサクッと読める。

 

ポイントは何事にもちゃんと考えて行動こと、準備すること、努力すること、じゃないかと思う。いや、著者はそんな風には書いていないし努力することなんて書いていないのだけれど、結局書かれていることをやろうとすると努力は欠かせない。そして、全ての行動には活力が必要で、活力の源泉は自分の目的と意思が必要となる。

 

ここまで書いてきて、ああ、また「7つの習慣」に繋がったな、と思った。この本は素晴らしく実践的なのだけれど、実践に移すための目的と意思が必要なことは、あまり書いていない。テクニックはもちろん大事なのだけれど、「東大思考」の最も大事なポイントはそっちではないか、と思ったりした。

 

記憶力、要約力、説明力、閃き、問題解決力について、非常に分かりやすく説明されていて、例題も豊富。興味ある人は読んで損はないと思います。サクッと読めるし、気になるポイントだけ読んでもいい。

怒り(吉田修一)

ふと何か小説を久しぶりに読みたくなって息子と行ったブックオフで購入。映画化された作品で気になっていたのと、110円だったのが理由(不純ですみません!)。

ダヴィンチでbook of the yearに、週刊文春ミステリーベスト、本屋大賞にもランクインしている。
 
夫婦殺害に始まり最後に殺人犯が判明はするものの、これはミステリーではない。人を信じること、裏切ることと裏切られること、心の弱さと葛藤、自分に負けることとそこから前へ進むこと、そういったことがテーマになっている。もちろんミステリーなので誰が犯人なのかというのはなかなか分からない仕掛けになっているけれど、それはおまけでしかない。そもそも最初の事件の動機も最後まで分からない。
 
信じること、裏切りといった人間の心ともう一つ、現代日本の様々な闇が当たり前のように描かれている点も注目したい。それらは決して特別なことではなく、日常の一部であり、だかrこそ日本が抱えている闇の深さを感じる。沖縄での米兵によるレイプ問題、貧困と風俗、同性愛者の問題。元々は市橋事件にインスペレーションを受けてのことだったそうだが、そこから様々な怒りが呼び起こされ、群像劇という形になったのだろう。

コンフィデンシャルマンJP プリンセス編

先日遅めの夏休みを取得して映画を見てきた。前作のロマンス編をたまため見てすごく面白かったのでこれはもともと見ようと思っていたけれど、三浦さんについては本当にびっくりした。特別ファンだったと言うわけじゃないけど、すごく良い俳優だったのに、残念でならない。改めてご冥福をお祈りいたします。

 

さて、この映画は純粋なエンターテインメントだ。ロマンス編を見ていると、仕組みは同じなのでより落ち着いて楽しめる。最後の展開は予想通りだったけれど、そこもか、という良い意味での裏切りもあり、派手なアクションがあるわけじゃないけれど、これがテレビだとどうしても小さく収まってしまうのでやっぱり映画館で見たい映画だ。

それにしても、シンプルなタイトルだけれどこの「プリンセス編」というタイトルがすごく秀逸だと個人的には思う。前回の「ロマンス編」もそうで、シンプルだからこそ色々なイメージを膨らませることができる。壮大な詐欺の話であり、プリンセスの成長物語でもある。

プリンセス役が素晴らしかったのはもちろんだけど、今回は柴田恭平が本当に格好良かった。後は江口!何て悪い奴だろう!漫画のようなベタな悪役で、きっと本人も相当楽しんで演じているに違いない。

次回作も作られるとのこと。今から楽しみだ。

すごい物理学入門(ロヴェッリ著/関口英子訳)

最近は外出機会がめっきり減ったけど本屋へ立ち寄るのは好きで、歩き回っていてふと気になって買うことがある。この本もまさにそうで、恐らくアマゾンやアプリ、ネットサーフィンでも推奨されることはないと思う。小さくて薄い本なので、中身も見ずに衝動買いした。

この本を読んでまず思ったのは、そう言えば昔は西洋では哲学と科学に境はなかったな、ということ。それまでは量子力学や熱力学が題材だったのが、最後の講義のタイトルは「自由と好奇心」。もちろんただの哲学的な命題ではなく、そこから脳科学の話も出てくる。ただ、最終章にこう言う題材が出てくるのは西洋ならではではないだろうか?

同じ最終講義では最後に自然と人類が扱われ、自然の一部である人類はいずれ滅ぶと言うことが出てくる。物理学から始まって科学の総合体みたいな展開になるのが非常に面白い。

物理学的な内容でいくと、この本で初めて「ループ量子重力理論」と言うのを知った。ここでは空間の原子と言うのが出てきて、原子核の1京分の1と言うから途方もなく小さいけれど、超ひもの6次元のひもよりは何となくわかりやすい気がする。

時間と熱力学の関係も面白かった。熱が時間の流れを生むと言うのは考えたこともなかったけれど、考え方としては非常にわかりやすかった。

 

ガリレオ文学賞受賞とあるけれど、正直それがどれほどの価値があるのか分からないし、日本ではあまり売れないような気がするが、こう言う本がこんまりの片付けの本を抑えて総合一位になるあたり、日本と西洋との文化の違いを感じた。

HarvardBusinessReview:October, パーパス・ブランディング

前も書いたような気がするけど、この雑誌は特集よりも数ページの記事の方が面白いことが多い気がする。そう言えばニュートンなんかも特集ではなく小さなニュース系が面白いことがある。

今回え言えば「ビジネスの世界で美人は不利」。え、美人って得じゃないの?と思う人が多いのではないだろうか。アンケート調査をしたところ女性が魅力的であると誠実ではないと見なされる傾向にあるようだ。ちなみに男性だとハンサムな方が少しだけ誠実に見られるとか。ただこれが日本人で同じ結果が出るかどうかは別議論。

 

特集の「パーパス」関連では、スタバ。他の記事も参考にはなるのだけど、パーパス自体はこれまでも随分と取り上げられている。スターバックスは身近の企業だけどそのミッションを初めて知った。「人々の心を豊かで活力あるものにするために 一人のお客様、一杯のコーヒー、そして一つのコミュニティから」。そう言えば比較的よくスタバではキッズスペースがあ流のだが、あれは幼稚園と一緒に作られたからかな?スタバの見方が少し変わった。

 

3点目として、個別の記事よりも全体について。最近の大坂なおみの活躍でも注目された人種差別問題が、欧米では本当に深刻な問題だということをちゃんと理解できていないと、欧米での考え方が理解できないな、と言うこと。日本人だから日本人の視点で記事を読むのは当たり前なのだけれど、欧米の記事はきちんと根底にある思想や社会的背景も頭に入れて読まないと本当には理解できないな、と改めて思った。

 

アジェンダ

  • 政治産業の競争戦略
  • マーケターは社会の課題を解決しブランドも成長させる
  • スターバックスはオンリーワンのブランドでありづつける
  • パーパスの持つ力を伝統企業に浸透させる方法
  • あなたの会社のブランド・コアを見つける方法
  • 強くなければ、「社会の公器」たりえない
  • スラックCEOの経営哲学「危機を無駄にするな」
  • 思いやりのある解雇10の心得
  • 職場のk苦参差別をどうすれば解消できるのか

ニュートン 2020 9月号 ベイズ統計超入門

ニュートンは、時折つい買ってしまう。タイトルに惹かれるのはもちろんとして、開くと中はイラストや写真で溢れている。しかも中身はそこまで専門的ではないので、素人に分かりやすいというのがポイントだ。

今回のベイズについてもイラストもそうだが例も分かりやすく、まさに超入門。結果Bが得られた時に原因Aによるものである確率を出すのがベイズの定理だそうで、例で興味深かったのが「本当に感染している確率」と「オオカミ少年が嘘つきの確率」。

 

前者は10万人に百人の感染者がいるとして、感染者が陽性と判定される確率が99%、非感染者が謝って感染とされる確率が3%だと、陽性と1回判定されたところで陽性である確率はなんと3.2%。これが2回判定して陽性だと52%。これを聞くと、改めて今のCOVID-19の「感染者」って統計的にどうなのだろう?と心配になってしまう。報道番組では色々な専門家を読んでいるけど、いつも統計学の専門を呼んでほしいと、と思っている。

 

オオカミ少年もなかなか面白く、仮に当初少年が嘘つきであった可能性が10%だったとし、空振り1回で28%、2回目で57.6%、そして4回目で9割を超えてくる。面白いのは5回空振りしたとに6回目にオオカミが現れても、95.6%とあまり減らないことだ。一度失われた信頼は簡単には取り戻せない、というあたり実感とマッチして改めて統計学の面白さを感じた。

両利きの経営(オライリー/タッシュマン)

タイトルと要約だけをかじってつい読まなかった本の一つが、クリステンセン教授の「イノベーションのジレンマ」で、この本を読み始めて改めて、「ああ、読んでおけばよかった!」と後悔した。帯には「イノベーションのジレンマ」を超える、という謳い文句があるが、その続編のような位置付けで、そこで明らかになった「ジレンマ」に対してどう解決するか、ということを豊富な事例で説明されている。それもそのはず、英語の原題は"How to Solve the Innovator's Dilemma"となっている。

 

なかなか厚めの本で380ページほどあるが、書いてあることは決して難解ではなく、理論自体も(本で紹介されている範囲では)、日本語のサブタイトルである「二兎を追う」戦略が未来を切り拓く、に集約されている。この「二兎」とは既存事業と新規事業のことで、「深化」と「探索」という言葉でも何度も何度も登場する。

 

そんなにシンプルなのになぜ出来ないのかというと、それらはゴール、条件、仕事の仕方が全く異なるため、両立させるには卓越したマネジメント能力とリーダーシップの両方が必要となるからだ。ここでのリーダーシップは2つあって、一つは新規事業のリーダーシップ、もう一つには既存事業と新規事業を両立させて会社を推進するリーダーシップとがある。本書で語られるのはほとんどが後者のリーダーシップで、そこには新規事業を見極める力や信じきる力、育てる力も含まれている。

 

この本を読むと、イノベーションは決して天才の閃きだけで起きているものではないことがよくわかる。いや、閃きそのものは必要なのだけれど、それはほんの一握りの天才だけでのものではなく、ましてや日本人に失われてしまったものでもない。日本ではイノベーションが産まれていないのではなく、育てられていないのだ。大きな要因はサクセストラップだが、本書に紹介されている豊富な事例を見ると世界的に見てもサクセストラップから逃れるのは実に難しいことであることがわかる。

 

ちなみに、解説が秀逸で、特に入山教授の冒頭の解説は完璧な要約になっている。